独立行政法人 放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター

最先端の放射線 固形がんの治療で世界をリードする


取材協力● 放射線医学総合研究所企画部広報課重粒子医科学センター
取材・文●編集部 撮影● 関 朝之



 千葉市稲毛区穴川4丁目にある独立行政法人放射線医学総合研究所(以下「放医研」・米倉義晴理事長)。敷地面積13万3348㎡、建物面積11万6037㎡。最先端の放射線治療、固形がんの治療で世界をリードする施設である。
 放医研が発足したのは57年も前に遡る。1957(昭和32)年7月で、病院部で診療が開始されたのは4年後の1961年5月だった。今日に見る重粒子線がん治療装置(HIMAC:Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba)が完成したのは1993年11月で、翌年6月、がん治療の臨床試験が開始された。


放射線医学総合研究所


米倉義晴理事長

半数の患者さんが、主治医の紹介を受け重粒子線治療を

 放医研のHIMACは、前段加速器、シンクロトロン、高エネルギー輸送系、物理・汎用照射系、生物照射系、治療照射系から成っている。


 

主加速器偏向電磁石。重粒子をシンクロトロンの周回軌道に保つために偏向させるための電磁石で、加速エネルギーに応じて磁場強度を変化できる交流電磁石である


 

高周波加速装置。シンクロトロンでは、加速空洞の高周波電場で粒子を加速する。6MeV/核子のエネルギーで入射した重粒子は、この加速空洞で加速され、数十万回転する間に最高エネルギーは800MeV/核子(光速の約84%)に達する


 治療には重イオン(炭素イオン)を使っており、その特長は、難治がんの治療、短期間での治療が可能、高いQOL(生活の質)が維持できる、手術しにくいがんの治療が可能、従来の放射線が効かないようながんも治すことができる、などだ。重粒子線治療も放射線治療の一種であるが、従来の放射線治療と重粒子線治療の違いは、その物理・生物学的特性にある。
 「ガンマ線やエックス線と違い重粒子線は、体の一定の深さに達したところで最大の線量になり、ぴたりと止まるという特性がある。この線量のピークをフィルターなどを使って腫瘍の形に合わせることが比較的容易なので、がんだけを狙い撃ちすることが可能なのです」
 放医研の前理事で、現在も同施設で研究に携わっている辻井博彦医師の言葉である。


「HIMACは世界最高峰の性能を持ち、抜群の治療実績を誇っています」
と語る辻井博彦放医研前理事


HIMACは24時間態勢で運転されている。
月曜日を装置の点検日にあて、火曜日~金曜日の昼間に治療が行われる

 頭蓋底腫瘍、眼腫瘍、頭頸部がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮がん、直腸がん(手術後再発したがん)、骨腫瘍(特に骨盤・脊椎)、軟部組織腫瘍などが治療の対象となる。治療費は314万円である。
 臨床試験が開始された1994年6月から2014年3月までに同施設で治療を受けた患者さんは8227人で、その数は毎年のように増えている。「半数の患者さんは、主治医の先生から紹介を受けた方々です。私どもの治療法が支持されているということですから、これは嬉しいですね」と辻井医師。


放医研が開発したHIMACのメイン加速器はリングの直径が40m、周長は130mもある。
写真はRFQライナック


重粒子のビーム入射装置(イオン源)


電子冷却装

ブロードビーム照射法に加えスキャニングビーム照射法を導入

 放医研では、2011年5月より「スキャニングビーム法」という新たな照射法も導入した。
 「スキャニング法というのはですね、細いビームを、一筆書きのように腫瘍のところにだけ線量を与えるという方法です。今までのやり方ですと、腫瘍のサイズがわかると、その一番広いところに合わせてビームを広げたものを照射するという方法だったんですよ。広げたビームが腫瘍のサイズと一致して照射されるんですが、このやり方だと、がんは不整形ですから、すぐ横にある正常な組織にも影響を与えるという欠点があった。これに対しスキャニング法は、細いビームを何本も腫瘍に合致したところにだけ点・点・点と一筆書きのように照射していきますから、正常組織にはほとんどダメージを与えることなく治療ができるんです」




治療棟には、重粒子のビームを効率的に利用するために3つの治療照射室があり、垂直ビーム・水平ビーム両方を使って治療ができる。特に治療照射室Bでは、水平・垂直両方のビームで同時に照射できるのが特徴である

 しかし、この照射法では、従来「呼吸などで動く臓器に対してはビームをかけ損ねるという欠点」があった。これに対し放医研ではきわめて高速でのスキャニング法を開発し、すでに技術的には欠点を克服している。臨床的には当面は、「より複雑な形状のがんに対してはスキャニングビーム法を用い、動く臓器に対しては従来のブロードビーム照射法で対処していく」という。
 スキャニングビーム照射法では、すでに437人の患者さんを治療した。

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