兵庫県立粒子線医療センター

陽子線と炭素イオン線の2種類の粒子線治療が可能な国内で唯一の施設
がんの治癒率を改善し、世界に向けて新しい粒子線治療の情報発信地にする


取材協力・写真提供● 兵庫県立粒子線医療センター
取材・文●編集部 撮影● 関 朝之




 兵庫県たつの市新宮町光都1丁目にある兵庫県立粒子線医療センター―。JR新幹線・山陽本線相生駅から車で約20分、バスを利用すると35分で「粒子線医療センター」に着く。下車してすぐ。ゴルフ場と見紛う緑の中に建つ施設の敷地面積は5・9ヘクタール、病棟は平屋建てである。
 院長を務めるのは不破信和氏。前職は南東北がん陽子線治療センター長で、2012年4月に前院長・村上昌雄氏の志を引き継ぎ院長に就任した。


不破信和院長

 重粒子線(炭素イオン線)による治療を最も早く開始したのは放射線医学総合研究所(千葉県)だが、兵庫県立粒子線医療センターは全国自治体で初めて粒子線治療を行った医療機関であり、陽子線(先進医療適用)と炭素イオン線(同)の双方を使用して治療にあたっているのは国内で唯一の施設だ。「世界に開かれた病院にする」ことを、基本理念の1つとしている。

「病院らしくない病院」で患者さんのアメニティーを考慮した設計

 相生駅からバスに揺られること30数分。兵庫県立粒子線医療センターは、病院と言うよりは公共の保養施設のような趣を呈している。施設の基本理念の筆頭には「がんの治癒率を改善するとともに、がん患者の社会復帰を目指す」とあり、ほかに「比較的早期の原発がんを第一の適応とする」「世界に向けて新しい粒子線治療の情報発信地にする」と掲げているが、「病院らしくない病院にする」という一文もある。緑に囲まれた施設はそれだけで心が癒され、近くにはゴルフ場もある。


施設の敷地面積は5.9ha。甲子園球場の1.5倍の広さである

 「当施設には北は北海道から南は沖縄まで、全国から患者さんがお見えになります。放射線科単科の医療機関で、病棟には50床ありますが、入院が必要なご高齢の方や合併症をお持ちの患者さんには優先的に当施設に入っていただきます。前立腺がんの患者さんのように比較的元気な方には、私どもの病院から30分圏内のところにある地域連携を結んでいる5つの病院のベッドをお借りして、入院していただいています。近くにはゴルフ場もありますから、治療の合間にゴルフも楽しんでおられるようですよ」
 こう語るのは、株式会社ひょうご粒子線メディカルサポートの専務取締役を兼任する亀井了事務部長。施設に隣接して県立のリハビリセンターがあるが、「患者さんのご要望によっては、このセンターの特別室をお借りして治療に通っていただくこともあります」(亀井事務部長)。
 兵庫県立粒子線医療センターが開設されたのは2001年4月1日。「ひょうご対がん戦略」のリーディングプロジェクトとして計画され、2003年4月から陽子線による一般診療を開始し、さらに2005年3月からは炭素イオン線(重粒子線)による一般診療も開始された。施設は播磨科学公園都市内に位置している。





回転ガントリー(上)と照射室。
照射ビームは各照射室に備えられている照射野形成装置を通過して患者さんに照射される


照射装置。治療は基本的には局所に限局した固形がんが適応となり、胃や大腸など蠕動があり正確に照射できない消化管腫瘍や、喉頭がんのように従来の治療法が確立されている腫瘍は適応外となる

 施設はイオン源、加速装置、5室の照射室からなる照射治療棟(1万2000㎡)と、病室50床、診察室、検査室、食堂などからなる病院棟(4500㎡)で構成されている。敷地には日本庭園もあり、まさに「病院らしくない病院」で患者さんのアメニティーを考慮した設計になっている。

 
エントランスホールと食堂。院内には明るい雰囲気が漂っている。
患者さんも和気藹々と食事の雰囲気を楽しんでいるという

 治療実績について見ると、2012年8月末現在までの治療患者数は5150人で、先進医療としては全国トップ。2011年度の地域別受診者を見ると、全受診者数は668人。地元兵庫県内の患者さんが圧倒的に多く(217人・33%)、次いで兵庫県を除く近畿175人・26%、九州72人・11%、中国62人・9%、中部58人・9%、四国47人・7%……などとなっている。ちなみに北海道からの患者数は7人・1%、海外からは4人・1%となっている。受診者を部位別で見ると、最も多いのは前立腺がん(189人・28%)で、次いで肝臓がん(134人・20%)、膵臓がん(79人・12%)、頭頸部がん(73人・11%)となっているが、難治がんといわれる膵臓がんの受診者が多いのが目を引く。
 「受診者もさることながら、膵臓がんは治癒率もいいですよ」と不破院長は言う。

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