独立行政法人 国立がん研究センター東病院

国内初、世界で2番目の病院設置型の陽子線治療施設
「職員のすべての活動はがん患者の為に!」


取材協力● 独立行政法人国立がん研究センター東病院
独立行政法人国立がん研究センター広報室
取材・文●編集部 撮影● 関 朝之

 千葉県柏市柏の葉6丁目にある国立がん研究センター東病院。国立柏病院と国立療養所松戸病院の統廃合により1992(平成4)年7月にオープンした。遡ること30年前の1962年には東京・築地に国立がんセンター(現国立がん研究センター中央病院)が開設されたが、以来、がんに関する業績で同施設は、国内のみならず世界をリードしてきた。そして2010年4月、国の方針に従い、独立行政法人として新たなスタートを切った。嘉山孝正前理事長を引き継ぎ2012年4月より、堀田知光氏が新理事長に就任している。
 東病院の特徴としては、国立病院として日本初の緩和ケア病棟が設置されたこと、病院内に陽子線治療施設が併設されたこと、が挙げられる。臨床応用が開始されたのは1998年で、病院設置型の陽子線治療施設を導入したのは同センターが世界で2番目である。


秋元哲夫粒子線医学開発部長

陽子線治療では国内初―スキャニングビーム照射法を導入した治療

 JR秋葉原駅からつくばエキスプレスに乗ること約30分、柏の葉キャンパス駅で下車し車で5分ほど。都心からさほど遠くないところに東病院は位置している。築地の中央病院とともに東病院が掲げるキーワードは、「All activities for cancer patients」すなわち、「職員のすべての活動はがん患者の為に」である。このキーワードを合言葉に、「世界最高の医療と研究を行う」「患者目線で政策立案を行う」ことが、国立がん研究センターの掲げる理念だ。
 正面玄関をくぐり、広々としたエントランスホールを抜けて本館の裏手に出たところに陽子線治療施設はある。施設を統括するのは、放射線治療科長を兼務する臨床開発センター粒子線医学開発部長・秋元哲夫氏である。秋元部長は、東病院だけでなく中央病院の放射線科外来でも患者さんを診ているという。放射線科で標準治療を行いつつ、先進医療である陽子線治療の専門医でもある。患者さんにとっては心強い存在だ。



回転ガントリー照射装置


陽子線治療照射室にある回転ガントリー(360度、どこからでも照射が可能)。
通常、陽子線治療は数回ないし数十回繰り返して行われる

陽子線照射を実施するには、まず医師による診察ならびに必要な検査が行われる。その後、複数の医師等により陽子線治療の適応や方法についての検討が行われ、患者さん個別の固定用具が作製される。のち、コンピュータを用いて陽子線治療の計画が立てられる。写真は治療室内のIN room CT


陽子線治療システム操作室


モニターで画像を見ながら治療は行われる。治療施設は、既存の病院棟と直結しているため、入院・外来のどちらでもスムーズに治療を受けることができる。1階には、陽子線治療の主な機器が設置されている。機器を効率よく使用するため、照射治療室は3室あり、うち2つは国内で初めて導入した回転ガントリー方式である

 東病院で陽子線治療を受けた患者さんで最も多いのは前立腺がん、次いで頭頸部がん、そして肺がん、肝臓がんと続く。2010年には107名の患者さんが陽子線による治療を受け、2011年にはさらに増えて、200人の患者さんが陽子線治療を受けたという。このなかには、70歳を超えた高齢の患者さんや小児がんなども含まれている。
 「陽子線治療は、70歳から80歳代と高齢の患者さん、あるいは体力的な問題などの理由でX線による放射線治療を受けることのできない患者さんにも有効な治療法です。病巣周囲の正常組織への被曝を極力抑えることができるからで、その意味では、長期的な副作用や2次発がんを抑えなければならない小児がんにも適した治療法だと言えます」と秋元部長。
 さらに2012年の秋頃からは、より精度の高い治療が同じ千葉県にある放射線医学総合研究所は重粒子線(炭素線)治療において、正常組織にはほとんどダメージを与えることなく治療できるスキャニングビーム照射法を導入したが、東病院の陽子線治療でもこの照射法を用いた治療を行うことができるようになった。
 「この照射法を使えば、従来の陽子線治療の技術では難しい場所にできたがんに対しても、より安全に高い線量を照射できる可能性があり、根治性を高めてくれるものと期待しています」



治療用固定具ボーラス


患者さん個別に作製される、陽子線照射の
部位決めをするコリメータ(真鍮でできている)

 本稿の取材は、粒子線医学開発部長室において行われた。取材の最中、電話のベルが数分おきに鳴る。患者さんからの、陽子線治療に関する問い合わせ(相談)の電話である。秋元部長は日々、これら相談に懇切丁寧に答えている。
 最先端の技術プラス、きめ細かい配慮に基づいた医療を実践する。東病院の基本方針の筆頭には「人間らしさを大切にし、患者個々の人権を最優先した診療の実施」と謳われている。

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(出所:厚生労働省ホームページより「がん医療」関連に限定して転載)

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