静岡県立静岡がんセンター

徹底的な高度先進医療の追求と「地域に根差した病院」を目指す
「がんの社会学」というコンセプトのもと、患者さん本位の医療体制を築く


取材協力● 静岡県立静岡がんセンター
取材・文●編集部 撮影●関 朝之

 2010年8月3日(火)、静岡県立静岡がんセンター(山口建総長)を皇太子殿下が御視察。陽子線治療棟において陽子線治療装置の概要を御聴取、回転ガントリー照射室などを御視察された。
 殿下のためにご用意した3つのパネル(「陽子線治療施設 概況」「世界に広がる陽子線治療」「陽子線治療の概要」)のなかで、「陽子線治療の概要」には特に御関心を示され、陽子線治療の特徴および、陽子線治療の適応条件等について熱心に御聴取された。

「がんの社会学」というコンセプトのもと静岡がんセンターは誕生した

 静岡県駿東郡長泉町下長窪の、小高い丘の上に静岡県立静岡がんセンターはある。開院したのは2002年9月。開院前の見学会では、2日間で県内外から約1万人の見学者が訪れた。陽子線治療施設をはじめ国内でも屈指の設備と、治療成績を誇る「都道府県がん診療連携拠点病院」である。


陽子線治療に代表される最先端医療、腫瘍内科医の充実、緩和ケア病棟の設置などに主力を注ぎ、静岡がんセンターは国内屈指のがん専門病院になった



陽子線の回転ガントリー照射装置


回転ガントリー照射室。
静岡がんセンターには同照射室が2室と、水平照射室1室がある。
「先進医療」として厚生労働省より承認されたのは平成18年1月で、照射費用は平均しておよそ260万円であるという


陽子線治療は、がん病巣を集中的に照射できる最先端の放射線治療。
副作用を抑えて、がんへの高い治療効果が期待できる


「がんの社会学」というコンセプトから静岡がんセンターは誕生した。「がんの社会学」とはどういう意味か? 山口建総長はこう話す。
 「当センターを計画するとき、がんの社会学というコンセプトを考えました。病変を持った臓器を治療するだけではなく、患者さんや家族の心も癒し、さらに、暮らしも可能な限り守り、しっかり社会復帰もしていただく。そのために、病院だけではなく、社会全体が支援する、といった考えです」


山口 建総長

 このようなコンセプトのもと、患者さんの不安や悩みなどに対応するために、「がんよろず相談」を設置。医療ソーシャルワーカーや看護師が心のケアや暮らしへのアドバイスに努めている。
 さらに山口総長は「がんの社会学」からの発想で、「21世紀のがん医療はどうあるべきか?」というテーマを胸に世界の医療機関を視察して回った。その結果たどり着いたのが、同病院を特色づけている診療システム「多職種チーム医療」の実現である。
 さまざまな分野の専門医チームによって最善の治療を追求しつつ、看護師やコメディカルも同じチームに参加する。情報を共有しながら対等の立場で、1人の患者さんをケアする仕組みである。「真の意味での全人的医療」を目指しているのだという。
 多職種チーム医療を実現するために、静岡がんセンターでは、どのような指導体制をとっているのか。
 山口総長はこう話す。
 「スタッフ全員に『患者さんに何か訊かれたり、頼まれたりしたときは、たとえ自分の専門外で関係ない内容であっても、それを解決できるスタッフにつなげるように』と指導しています。それは、多職種チーム医療の最大の欠点である、『それぞれの職種の人が自分の役割はしっかりと行うけれども、あとは知らぬ存ぜぬというグレーゾーン』をなくすためでもあります」
 このようなチーム医療を実現することで、患者さん個々の「声」はトップまで伝わることになる。それをより確実に可能ならしめるために、投書箱の内容を電子情報化して幹部に届くようにしたり、WEB上の窓口を開放するなど6つの情報ルートを設置しているという。
 「われわれが目指しているのは、徹底的な高度先進医療の追求と、患者視点の重視を同時に追求しそれを実現できている、地域に根差した病院です」
 徹底的な高度先進医療の追求と、患者さんの目線に立った「地域に根差した医療」の実現。国内屈指の治療成績は、ここから生まれた。
 皇太子殿下の行啓、御視察に相応しい施設として、静岡県教育委員会および広報局が静岡がんセンターに白羽の矢を立てたのは容易にうなずける。

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