日本で昔から親しまれている緑茶で
がん細胞の発生と成長を抑制する


半田えみ 医療法人社団 中成会 半田醫院

緑茶でがん細胞を抑制

 ちょっと一息ティータイム、みなさんは毎日どのようなお茶の種類を何杯くらいお飲みになっていますか。緑茶、ウーロン茶、紅茶、ジャスミン茶、蓮茶、ハーブティー、柿の葉茶、麦茶、ほうじ茶、甜茶、蕎麦茶、黒豆茶などなど。
 この他にも、たくさんの種類がありますね。その味も相当な種類があり、みなさんそれぞれ好きな味をそのときの気分で選んで飲まれていることでしょう。
 これらのお茶の成分は、それぞれにいろいろな効能効果があります。最近では、お茶だけでなく食品は、その成分の効能効果も分子レベルまでわかるようになり健康維持、病気予防そして、病気治療にまでその成分が役に立っています。以前は、食品の成分は、3大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質)、5大栄養素(3大栄養素+ビタミン+ミネラル)、7大栄養素(5大栄養素+水、食物繊維)までが主流でしたが、現在はファイトケミカルという主に植物に含まれる機能性成分も評価されるようになりました。ファイトケミカルは栄養素ではありませんが、人体にとって抗酸化作用、免疫増強作用、がん抑制作用などを持ち健康維持、病気予防、病気治療に大きく関わってきています。
 今回は、このファイトケミカルのカテキンと言うポリフェノールが多い、私たち日本人にとって一番なじみのある緑茶について書いてみたいと思います。緑茶の成分が体にいいお話はみなさんもいろいろとご存知と思います。特に、がんの患者さんにも緑茶の成分が栄養療法の中に取り入れられています。私たち日本人には、緑茶が治療? というのはピンとこないかもしれませんね。
 私たち日本人は、基本的に緑茶は飲むものと認識しています。海外で薬局を見て歩きますと、緑茶のサプリメントをよく目にします。緑茶はお茶として入れて飲む効果とお湯で抽出できない成分を食べることで得られる効果と両方持ち合わせています。
 まずは、緑茶中の有効成分カテキンです。このカテキンががん患者さんの栄養療法において評価されているのは、がんの発生や成長の抑制メカニズムに効果を発揮できるからです。カテキンのがん抑制メカニズムは、①発がん(遺伝子の突然変異)の抑制、②がん成長促進の抑制、③がん細胞アポトーシス(自滅死)の促進、④がん転移抑制、⑤がん組織での血管新生抑制などです。
 がんが成長していくときに、がん細胞によって新しい血管が形成されます。血管新生が、すべてのがんの成長に重要な必要条件なので、その新しい血管が形成されるところに対抗してくれる最もパワフルな成分の1つが緑茶のカテキンなのです。

緑茶に含まれるエピガロカテキンガーレート(EGCG)の効能

 特に、湿潤気候の地域で栽培された緑茶は、カテキンと呼ばれるポリフェノールが非常にたくさん含まれています。緑茶に含まれるカテキン類の一つにエピガロカテキンガーレート(EGCG)があります。
 ちなみに紅茶の場合は、つくられる過程で発酵が必要ですので、その間にカテキンは破壊されてしまいます。しかし、緑茶は発酵の過程を経ないので、多量のカテキンがあり、それ故に緑茶は変わらず緑のままなのです。2、3杯の緑茶を飲むだけで、EGCGが血中に豊富になると言われています。それは、毛細血管によって体中の隅々まで広がっていきます。それらは、体中のすべての細胞を取り巻き栄養を与えます。EGCGは、それぞれの細胞の表面に接着し、その作用は、がん細胞のような異質の細胞は周囲の組織に侵入するための特定のメカニズムがあり、EGCGは、侵入が始まるとシグナルを発してレセプターをブロックするのではないかと言われています。
 そして、先ほども書きましたが、血管新生の形成を妨げ、血管新生がすべてのがんの発達の重要な必要条件であるので、この過程の抑制、ミクロの腫瘍の進行を防ぐためにカテキンは役立ってくれるでしょう。血管新生を抑制することは、腫瘍形成を抑制することも意味し、カテキンは、周囲の組織の通常の機能を危険にさらすことなく、潜在的な状態で効果が発揮されます。
 緑茶の効果を得ることの鍵は、カテキンを含む割合が最も高い緑茶の種類を選ぶことです。そして、私たちがすぐにでもできる一番いい方法は、毎日緑茶を飲むことです。それによってEGCGを定期的に摂れ、その血中濃度は、常に前がん細胞を攻撃するのに十分に高い血中濃度を維持できます。
 また、EGCGは、血管新生を命じるレセプターもブロックすることができると言われています。そのため、EGCG分子によってブロックされたレセプターたちは、がん細胞が組織に炎症細胞の因子を侵入させ、腫瘍細胞を成長させるのに必要な新しい血管をつくることには、もはや応答することはできなくなります。

緑茶を飲むがん患者に、実際に見られた効果

 モントリオールにある分子医学研究所のチームは、いくつかのがん細胞で緑茶から分離されるEGCGの影響をテストしました。その報告は、彼らは注意深く観察し、白血病、乳がん、前立腺がん、腎がん、そして皮膚がんと口腔がんにおいて緑茶によるがん細胞への影響は、がん細胞の成長がゆっくりになったということです。
 また、緑茶は体の解毒にも働き、肝臓の機能を活性化し、体からより速くがんの毒素を排除することができます。
マウスにおいては、乳がん、肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんなどにおいて、化学発がん性物質の抑制効果が見られました。
 その他の食品からもがん治療に効果のある栄養分子が、アジアの一般的な食事から見つかっており、そういった理由でEGCGの効果は未ださらに目をひきます。たとえば大豆ですが、ハーバードの栄養と代謝の研究所が示したことは、緑茶と大豆を別々に摂取したときより、一緒に摂取したときさらにがん細胞に対する効果を増すということが見られたとのことです。これは、前立腺がんと乳がんの両者で証明されました。
 これらのことから、研究者たちは、私たちの研究が示唆するのは、大豆のファイトケミカルと緑茶が一緒になると潜在的な食養生的な効果を発揮し、エストロゲン依存性の乳がんの進行を抑制するのでしょうと話しています。
 このような研究の結果報告などを聞きますと、私たち日本人は本来毎日緑茶を飲み、大豆そのものやたくさんの大豆製品を食べてきましたから、そのためホルモンに関係するがんは少なかったのでしょう。がんの病気自体は昔からある病気ですが、現代のような高率でがんが発症していなかったはずです。そして、がんの種類も発症割合が変わってきたことも事実です。食事の欧米化だけではなく、緑茶や大豆、大豆製品を摂る頻度も減ってしまったからでしょう。
 さて、もう1つ別の研究報告があります。日本国内で乳がんを発症し治療した緑茶を飲む方々に、「1日に何杯の緑茶を飲みますか?」と言う質問をしました。
 この乳がんの患者さんたちは、他臓器に転移のない方に限りました。
 この質問に対しての答を2種類のグループに分けました。グループ分けは、毎日1杯飲むグループと3杯飲む2つのグループです。1日1杯の緑茶を飲む人たちより、毎日3杯飲む人たちのほうが再発57%と低かったと言うことを研究者たちは発見しました。
 また、前立腺がんの男性において、1日5杯の緑茶を飲むことはがんが50%進行がんのステージに進むリスクを減らしたという結果です。
 これらのことからも、緑茶の効果に注目すべきところはたくさんあります。
 世界中には、たとえばワインと同じように、たくさんのお茶があります。産地、品種、発酵程度などの差により、これらの、お茶のフレーバー(味)は、相当な種類があります。ですから、みなさんの好きな新しいフレーバーをいろいろと試してみてください。

どのような緑茶を選んで飲めばよいか

 緑茶についてもう少し触れてみたいと思います。緑茶と言えば、中国と日本の緑茶が有名ですね。中国と日本の緑茶には多くの異なったところがあり、そして、中国茶、日本茶はそれぞれ異なったいろいろな種類があります。そして、情報によりますと中国緑茶と日本緑茶では、日本の緑茶のほうがカテキン含有量が多いのだそうです。できればカテキンの少しでも多い緑茶を飲んでください。
 緑茶もティーバックなどで簡単に飲めるものも最近は出回っています。しかしながら、そのティーバックのお茶でこれまで述べてきたような、緑茶の素晴らしい効果を得ることは難しいのです。
 ティーバックの中身は、葉を細かくしたもので、収穫されたお茶の残りカスのようなものなのです。お茶の本当の味は、ティーバックだけのクオリティーの低い製品だけを試すことでは、本当の緑茶には出会えないのです。
 私はお茶の専門家ではありませんが、ぜひ次のことを試してみてください。
 まずは、基本的なことですが、本物の茶葉を素敵な急須(ティーポット)で入れてください。ステンレス製の茶器は避けてください。お茶を入れるとき、カテキン分子を最大限に抽出するのには、8~10分かけることが良いそうです。入れたお茶は、素敵な湯のみ茶碗(カップ)で飲んでください。がんの予防効果を可能にしていく最適なカテキン量は、毎日3杯のお茶を飲むことです。
 そして、お茶を飲むときは、家族や友達と一緒に楽しみながら、または1人でリラックスできる時を楽しんでください。
 最後に、私はがん統合医療の中の栄養を中心に毎回話題にしてきています。毎日の食事はもちろんですが、治療レベルになりますとがんが発生、成長するメカニズムに対し分子レベルの栄養素でそれを抑制していくことです。画像に映ってくる前のミクロのがんも治療する時代になってきました。最近では、Circulating Tumor Cell(CTC)血中循環腫瘍細胞検査をすることで、画像に映し出される前のがんを早期発見できるようになりました。また、さらにこの検査は発見されたがん細胞には、治療するどんな薬や栄養素が効果あるか検査することができます。こういった検査により、単にがんのための栄養療法よりさらに上を行く、たとえば、「○がんのAさんのためだけの……」というような、真の個人の栄養治療処方箋ができるわけです。

(2014年4月30日発行 ライフライン21がんの先進医療vol.13より)

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